家主が賃貸物件からの賃借人の退去を求める場合の流れ

家主が賃貸物件からの賃借人の退去を求める場合の流れ

まずは、賃貸物件の賃貸借契約を終了させなければならない

 家主が賃貸物件から賃借人を退去させるためには、まずは、賃貸借契約を終了させることが必要です。
 賃貸借契約を終了させるには、以下のいずれかの方法があります。

≪方法①≫ 契約期間が決まっている場合

 この場合、契約期間が満了する前に、家主から、所定の期間内に更新拒絶の通知をしたうえで、契約期間が満了すれば契約は終了します。
 ただし、家主からの更新拒絶には「正当事由」がなければなりませんので、場合によっては立退料の支払が必要です。

≪方法②≫ 契約期間が決まっていない場合

 この場合、家主からの解約申入れによって契約は終了しますが、単に解約申し入れをするだけではダメで、解約することについての「正当事由」(場合により、立退料の支払)が必要です。
 正当事由のある解約申し入れがあれば、申し入れをしてから6ヶ月で契約は終了することになります。

≪方法③≫ 賃借人に契約違反がある場合

 賃借人の契約違反とは、例えば、家賃の不払いや賃借物件の用法違反など、賃借人が賃貸借契約に基づく義務を守らなかった場合のことで、この場合、家主から、債務不履行を理由に契約を解除することができます。
 ただし、契約を解除できるためには、賃借人の契約違反がある程度重大なものでなければならず、例えば、家賃の不払いのケースであれば、一般的に3か月程度の不払いがあることが必要とされています。

≪方法④≫ 賃借人との間で契約終了の合意ができる場合

 家主と賃借人との間で、契約を終了させることについての合意ができるのであれば、その合意で定めた時期に契約は終了します。
 もちろん、合意を強制することはできませんので、賃借人が契約終了を受け入れることが必要になります。    

 

契約が終了したにもかかわらず、賃借人が任意に退去しない場合は・・・

 契約が終了したにもかかわらず、賃借人が任意に賃借物件から退去しない場合には、強制的に退去させるための手続を行う必要があります。
 具体的には、建物の明渡し(場合によって未払い賃料や契約終了後の損害金と合わせて)を求める民事訴訟を、裁判所に提起することになります。
 この結果、判決や和解などで明渡しが認められたにもかかわらず、賃借人が任意に退去しない場合には、家主が、裁判所の強制執行手続によって建物の明渡しを完了させることができます。
 民事訴訟の提起から判決・和解に至るまでに、少なくとも数か月の時間がかかりますので、契約終了後も賃借人が任意に退去しない場合、速やかに民事訴訟に移行するのがポイントです。
 なお、明渡しを求める訴訟と合わせて、未払い賃料や損害金といったお金の支払も請求できますが、判決や和解でこれらの請求が認められても、現実に賃借人からお金を回収できるかどうかはまた別の問題になります。

(2025年5月13日)