詐欺被害によって預貯金口座に送金してしまった被害者にとって必要な対応

詐欺被害によって預貯金口座に送金してしまった被害者にとって必要な対応

① 振込先口座の凍結要請

 詐欺被害に遭ったことに気づいたら、口座からの被害回復のために、すぐに、振込先口座を凍結し、少しでも多く残高を残しておく必要があります。
 この場合、被害者として、金融機関に直接口座の凍結要請をすることもできますが、警察に届け出て、警察を通じて凍結要請をしてもらうのが、スピードやコスト面からベストの方法です(合わせて、刑事事件として立件される可能性も出てきます。)。もちろん、弁護士に依頼をして凍結要請をすることもできますが、警察を通じて凍結要請ができる以上、凍結要請に必要な弁護士費用が余計な出費となりますので、おすすめできません。
 なお、時間的に古い振込の場合、すでに他の被害者などによって口座凍結要請がされており、口座が凍結されている場合も多くあります。

 

② 振込先口座の凍結状況および残高の確認

 口座凍結が済んだら、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」で、自分の振り込んだ口座について検索をし、凍結がされているかどうか、残高がいくらあるかなどを確認します。
 預金保険機構のホームページ上の公告に凍結状況が表示されるまでは、口座凍結からおおむね1~2ケ月かかります。公告は、原則として、毎月1日と16日(休日の場合は以降の直近営業日)の月2回行われますので、口座凍結後しばらくの間は、月2回ほど自分の振込先口座をチェックしておきましょう。
 なお、口座凍結後に、直接金融機関に連絡することで大まかな残高を教えてもらえることもありますが、これは、制度上のものではありません。教えてもらえるかどうかは、金融機関にもよりますし、また、残高が少ない場合には比較的教えてもらえる傾向があります。

 

③ 振込先口座の残高と「独り占め」の検討

 凍結口座の残高がある程度大きく、預貯金債権がまだ消滅に至っていない時期であれば、預貯金債権を消滅させずに、口座残高を独り占めする(=分配手続に進ませない)ことを検討してもよいと思います。
 そもそも、振り込め詐欺救済法に基づく分配金の支払は、複数の支払該当者がいて、犯罪被害額の総額が預貯金債権額を超える場合は、それぞれの犯罪被害額に応じて按分されることから、分配を受けられる額が最終的に少なくなるおそれ(つまり、「独り占め」できない可能性)があります。
 また、振り込め詐欺救済法に基づく分配金の支払を待っているだけでは、特に預貯金口座の残高が多い場合などは、公告手続でそのことが広く知られてしまうことと相まって、別の被害者が仮差押などを行って振り込め詐欺救済法に基づく手続を終了させてしまう可能性が高くなります。そうなると、分配金の支払は全く受けられなくなり、自分自身の民事手続が遅れれば、口座残高からの回収が全くできなくなる(つまり、他の被害者に「横取り」される可能性)こともあります。
 具体的な独り占めの方法としては、①振込先口座の仮差押え(裁判所の手続きであり、担保として一定の金銭を事件終了まで預けておく必要あり)をして振り込め詐欺救済法の手続を止め、通常の民事訴訟で判決などの債務名義を取得し、口座残高を差し押さえる方法と、②権利行使の届出(裁判所の手続ではなく、金融機関に被害者として直接届け出る)により、振り込め詐欺救済法の手続を止め、通常の民事訴訟で判決などの債務名義を取得し、口座残高を差し押さえる方法があります。②の方法は、仮差押えであれば必要な担保金が不要ですが、債務名義の取得に時間がかかれば、他の被害者による差し押さえに後れをとる可能性が高くなります。
 もっとも、このような独り占めの方法は、裁判所の手続が必要であり、弁護士への委任が避けられませんので、手続的・費用的に重たいものといえます。したがって、このような方法をとるかどうかについては、コストパフォーマンスを考えながら慎重に決める必要があり、通常の分配金の支払手続を選択する方が望ましいケースも多くあります。

(2024年1月12日)