〔マンション裁判例紹介〕管理規約に規定されたコミュニティ費用の支払義務があるとした「東京地裁令和3年9月9日判決」

〔マンション裁判例紹介〕管理規約に規定されたコミュニティ費用の支払義務があるとした「東京地裁令和3年9月9日判決」

〔事案の概要〕
 本件は、管理規約に定めのあるコミュニティ費用の徴収及び支出は、管理組合ができる業務の範囲と管理費を超えており、区分所有法3条に反して無効などとして、区分所有者である原告が、マンション管理組合に対し、管理規約に定めるコミュニティ費用について支払う義務がないと主張した事案です。

 

〔本件マンションの管理規約の内容〕
 本件マンションの管理規約には、①区分所有者は、敷地および共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費やコミュニティ費用などを管理組合に納入しなければならないこと、②管理組合発足後、管理組合の親睦を図ることを目的としてコミュニティ費用月額100円/戸を管理費とは別に支払うものとすることが定められていました。

 

〔コミュニティ費用の使われ方〕
 コミュニティ費用は、主にマンションのハロウィンパーティーに充てられており、このパーティーは本件マンションの区分所有者及び居住者(家族を含む。)のみが参加できるパーティーであり、これら以外の者の参加は許されていませんでした。
 このパーティーについては、飲食物にコミュニティ費用が支出されることに対して懸念の声が出たことなどから、平成28年度からは会費制とし(大人500円、子ども200円、アルコールは1杯100円)、子どもに配るお菓子を除く飲食物についてはコミュニティ費用からは支出していませんでした。

 

〔裁判所の判断内容〕
 コミュニティ費は主に本件パーティーに支出されているところ、マンションの住人(本件マンションの区分所有者、居住者又はその家族のみが参加可能であり、自治会ないし町会による会合とは異なるものである。)が互いに交流を持つことにより、一定の防犯効果を期待し、マンションの資産価値低下を防止するとの考え方には一定の合理性がある。
 また、少なくとも平成28年以降は、アルコールを始めとする飲食物に係る費用についてコミュニティ費用から支出しておらず、本件パーティーへの支出をもって一部の住人らによる懇親会に支出するものと同視することもできない
 そうすると、本件パーティーへの支出があることが想定されたとしても、コミュニティ費用の徴収は区分所有法3条に反しないというべきである。
 また、原告は、マンション標準管理規約について指摘するが、マンションの標準管理規約は、区分所有者による規約の設定等に当たって参照されるべきモデルないし指針ではあるが、標準管理規約のとおりに規約をつくらなければならないものではなく、標準管理規約の記載から管理組合の目的の範囲の内外が判別されるとはいえない。
 したがって、原告の主張は採用できず、原告にはコミュニティ費支払義務があると認められる。

(2022年9月15日)